5/15/2022

北一ホールのガスランプと小さな点灯式


地球という美しい私たちの星が「新型コロナウイルス」という脅威に晒されて以来、

多くの人たちの暮らしが変わり、私たちに流れる時間もぴたりと止まったようになった。

旅が好きで、本来ひとつの町に留まっていることの辛い性分が「地元軟禁」を強いられ、

遂には旅行、海外、アメリカ、ニューヨーク、「帰りたい」といった言葉を脳裏から追い払うようにさえなっていた矢先、

5年前の小樽への小旅行を思い出した。

道民なら誰もが知る「北一ホール」。ほの暗い店内には160個を超えるガスランプがほんのりと優しくテーブルを照らし、

これ程を安らぎを具現化した空間を知らないと思ったくらい心も身体も癒されたのであった。ピアノの生演奏も粋を添えていた。

私は夕方に生まれたから、と時々理由付けをするのであるが、もとより日暮れ時がとても好きで

そろそろ本の文字が読めなくなるなという時刻が訪れる時、

リビングルームの角にあるフロアランプを灯すのが私には小さくも嬉しいイベントであった。

そのことを、灯りを点けるというだけの喜びを、「コロナのせい」ですっかり忘れていた。


北一ホールのガスランプに再び憧れを抱きながら昨夕、

久し振りにフロアランプの点灯式を行うと、息を吹き返した小鳥のように、

はかなり図々しいが、本当にそんな気持ちで心が浮き立ったのだった。

新型コロナウイルスの世の中が始まってしまってから2年ぶりに感じたゆとり、であった。



11/18/2021

「季節感暮らし」に戻る

 



人生から切り取られたような日々が、ようやく時の流れに戻ろうとしている。

インテリアを書いてきた人間でありながら、振り返ればこの1年半は

季節感に心を傾けることもなく遣り過ごしてきた。もったいない。

「リクール・リビング」というこのブログタイトルも、

20年以上の海外生活から戻った私たちの夫婦の旭川ライフを綴るべくしたもので

前回までは小さな旅の足跡ばかり残してきたが、ようやく本来の姿を得る。


11月から1月の終わりまではこの香り。

以前マサチューセッツ州のYankee Candleで購入したもので、

とても好きな香りなのだが製造は終わっているようで寂しい限り。

爽やかでいて愁いを含んだ心地の良い香りは晩秋の我が家に静かに漂う。

香りは脳に作用して人を動かし感じさせるが、おかげで

不安と空虚に満ちた時間に、今ようやく別れを告げられそうである。